大分大学 医学部
歯科口腔外科学講座
教授
河野 憲司
研究概要
1.口腔癌の抗癌剤感受性の規定因子
口腔癌に対する抗癌剤の効果と副作用の程度はそれぞれの癌,それぞれの患者で異なっている。よって効果的な癌化学療法を行うためには,個々の患者にあった抗癌剤を選択することが必要である。本研究では,培養癌細胞を用いたin vitroの実験データならびに臨床データをもとに,抗癌剤の効果を規定する因子を探索し,各患者にとって最適の化学療法レジメを選択する手段の確立を目指している。
2.口腔癌細胞の浸潤・転移能
口腔癌の予後を決定する最も大きな因子は,原発巣の大きさと頚部リンパ節転移の有無である。そこで,癌細胞の浸潤能と頚部リンパ節転移能がどのような分子によりコントロールされているかを明らかにし,癌の分子生物学的性格に基づくリンパ節転移の早期診断と早期治療,さらに浸潤・転移を抑制する新たな治療戦略の確立を目指している。
3.初期口腔癌,前がん病変の非侵襲的診断法の確立
口腔粘膜の初期癌の診断は細胞診やトルイジンブルー生体染色法によって行われているが,診断精度をさらに高めるために新たな検査法の確立を目指している。具体的には特定波長の光線を口腔粘膜にあて,自己蛍光の変化による早期病変の検出を計画している。
研究テーマ及び得意とする技術
1.新しい抗癌剤の開発,放射線照射法の工夫などにより癌治療は大きく発展してきたが,口腔癌の治療成績に関しては過去10年間で目覚しい向上はないと言われている。そこで個々の癌の生物学的個性を把握し,個別に最適の方法で治療を行うことが重視されてきている。とくに各種抗癌剤に対する感受性を予測することは癌治療成績の向上に不可欠と考えられる。本研究の成果は癌治療における化学療法の位置づけをより大きなものとし,とくに進展癌の治療に際して術前化学療法と機能温存手術により,患者の社会復帰を容易にすることが期待できる。
2.手術が適用できない進展癌に対する治療戦略として,“癌冬眠療法”がある。つまり比較的少量の抗癌剤により患者の体力を温存しながら癌の増殖を抑制するものである。癌の特徴は周囲へ急速に浸潤して周囲組織を破壊することと,リンパ節や遠隔臓器へ転移を生じることである。現在,癌化学療法は抗癌剤により癌細胞の増殖を抑制することに主眼をおいているが,新たな戦略として癌細胞の運動(浸潤)と転移を抑制することにより癌を局所に留め,全身への播種を予防することで,治癒困難な進展癌との共存を可能にし,患者の生存期間を延長することが期待できる。
3.肉眼的に診断困難な初期口腔癌を早期発見するには,非侵襲的,高い正診率,低コストの検査法が要求される。かかる検査法の確立により口腔癌健診を広め,口腔癌致死率の低下につながる
産学連携の実績及び研究提案等
口腔癌の診断・治療、癌細胞の運動、癌細胞における接着分子の研究など。
キーワード
口腔癌・癌化学療法・抗癌剤感受性・湿潤・癌転移
専門分野
歯科口腔外科
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